米中貿易戦争、県内企業への影響は?

 米中貿易の行方に暗雲が漂っている。トランプ米国大統領は中国の知的財産権侵害や国内産業保護を理由に、突出した経済成長を続け経済大国となった中国からの輸入に対して制裁関税を発動し、中国もまた報復関税を実施、米中双方による高関税をかけ合う貿易戦争の様相を呈しているからだ。日本の大きな貿易相手国であり、世界1、2位を競う2つの経済大国の対立は、日本企業をも巻き込み世界経済の失速ともなりかねない懸念をはらんでいる。

 これまでに米国は、米通商法232条に基づく鉄鋼・アルミニウム製品への高関税を賦課しており、それに続く制裁関税を7月に340億ドル、8月に160億ドル、総額500憶ドルに相当する約1,300品目の輸入品に対し、各25%の追加関税を課した。1,300品目の内訳には金属加工機や射出成型機、金型といった生産機械、化学品や医薬品、自動車や航空宇宙産業の部品などが含まれている。

 さらに9月には家具・家電、冷凍肉など身近な生活用品を含む2,000億ドル相当の中国製品に10%の追加関税を実施し、両国が年内に合意に至らなければ、二段構えで2019年1月1日から税率を25%に引き上げるとしている。

 これに対して、中国による対米制裁の対象は、米国産の輸出の6割を占める大豆のほか、アルミニウムのスクラップ製品、綿花、電気自動車(累計8品目)に25%、残りの120品目(ナッツ、ドライフルーツ、果物、ワイン、エタノール、シームレス鋼管、古紙・板紙など)に15%、さらに米国の中国市場への依存度が高い液化天然ガス、銅鉱のほか、木材、板ガラスなどに5〜10%、1,100億ドルに報復関税をかけた。

 2017年の米中貿易は、中国からアメリカへの5,056億ドルに対し、アメリカから中国へは1,539億ドルだから、課した追加関税は米国は中国から輸入した5,056億ドルの製品のおよそ半分、中国はアメリカからの輸入品の約7割に及ぶことになる。 影響と警戒感  こうした報復戦争の今後の推移によっては、米中に工場を持つ企業や輸出企業への影響が懸念される。

 たとえば、自動車やスマートフォン、家電製品などさまざまな製品の部品を作るのに欠かせない工作機械。その受注額は「景気の先行指標」といわれる。受注統計を集計する業界団体・日本工作機械工業会(日工会)が9月26日に発表した統計でみると、2017年度は日本メーカーの受注高が前年比38.1%増え、1兆7,803億円と過去最高を記録した。

 だが中国向け受注はそれまで前年同月比プラスを維持してきた「一般機械向け」(ロボットや建設機械など)がマイナスに転じた。8月の月次受注高1,404億円のうち、半分以上を占める外需が1年9カ月ぶりに前年同月を下回った。

 外需全体では4.6%減少し、中でも中国の落ち込みは今年3月で358億9,700万円だったものが、月を追って下降基調を続け7月に200億円を割り、8月で189億6,900万円と37.3%の大幅減少となった。

 ただ、中国からの工作機械受注の減少は、前年同期の伸び率が同プラス184.5%と急上昇した反動という側面も指摘されるが、懸念されているのは間接的な影響だ。中国の自動車や関連部品、半導体製造装置のメーカーが、輸入関税による米国への輸出減や、中国国内における景況感の悪化を見込み、工作機械をはじめとする設備投資への影響が徐々に現実なものになりつつあるともいえる。

中国に生産・販売拠点を置く富山県内企業への影響は

 自動車、機械、電子部品関連に繋がる県内企業は少なくない。

「影響が出始めるとすれば、今期の下期あたりからだろう」(釣谷宏行社長)と推測するのは、黄銅棒・線の国内トップメーカーのCKサンエツ(本社高岡市、東京1部)だ。黄銅棒・線はパソコンのコネクタ、自動車の計器、エアコン、携帯電話の充電部分、ガスコンロのバーナーヘッドなど先端産業から日用製品まで需要範囲は広く、中国、台湾に販売子会社を設立して海外にも販路を広げてきた。